『黒岩博士の恐怖』から登場した、八嶋智人演じる「花田」。さまざまな職業で事件編の最後にひょっこりと現れては、名推理をとうとうと述べ、スッと消えていく。彼は、何者で、作品内でどのような働きをしているのだろうか。
もともと「花田」は、古畑（田村正和）のセリフを減らすために作られた役である。そのため、「花田」はストーリーに則った役というよりは「物語の傍観者」「説明者」として劇中に存在し、一定の役柄を持たない。そして、視聴者が解決編を見る前に、古畑に代わって事件のあらましを整理して視聴者に説明するという働きをしていたのである。
しかし、ディスカッション・ドラマとしての『古畑任三郎』のクオリティを保つため、結局、田村正和のセリフが減ることはなかった。
それでも、「花田」が残ったのは、三谷幸喜が八嶋智人の演技を気に入ったからに他ならない。しかし、三谷の期待と裏腹に「花田」の存在は視聴者には概ね不評となった。それは、ストーリー中に「説明者」が現れる形式に視聴者が慣れていなかったことや、田村正和のセリフが減ることなく「花田」の解説が残った結果、｢花田」の部分がくどくなり、視聴者にとって邪魔になってしまったからである。
また、物語が説明を必要とするほど複雑ではなかったことも理由のひとつとして上げられる。皮肉にもこれは、脚本がそれだけシンプルに洗練されていた証左ともなったのである。
